樹の尾をもつ金色さかな/それを食う黒い鳥

金色さかなは根を持たず ゆらゆらゆらいで泳いでゆく
星と星のあいだを 谷を 岩の中を 川の流れを 大洋の皮膚の下を
金色さかなの尾びれは枝となり 四方八方にのびてゆく
葉をつけず 花を咲かさず 実もならず
闇を裂き 見る者の目を眩ませて
金色魚はゆらゆらとゆらいで泳いでゆく
どこにいくわけでもなく
どこにいくのか忘れて
ゆく場所を失くして
それでも枝はどこまでもゆっくりゆっくり育ってゆく
自由で美しい そして孤独な金色さかな。

黒い鳥は一本脚
鋭い爪を隠して 黒々とした艶のある羽を背負って 待っている
そのからだは大きなカラス その脚は鷲のように屈強な
その顔はヒヒ 時にうつろで時に思慮深いその目はヒト
西に傾く光に包まれて
優しい光 まるで黄金でできた世界のように
もっとも美しい時間 もっとも幸福な場所
そして恐怖と悲しみをうむ場所に
突如 現れる
一歩ずつ 重たいからだを持ち上げてはどすん 地を蹴ってはどすん
その ああ その場所で
ひときわ強い光の差す場所で
止まる
ゆっくりとこちらを振り向き その目で見る
その目でとらえる とらえる とらえる。

そこは昼も夜もない世界
木々の間
ふたつは出会い
静かなさざなみをたてながら
山の肌にとけてゆく

鳥はさかなを愛した
山の肌は凪の水面のように
音もたてずに静止している